情報設備の設計ポイント
 緊急コール
 施設には必要不可欠なこのシステムは、一般にナースコールと呼ばれる。昨今、入居者及び施主ニーズの多様化、施設用途の違いなどにより、さまざまば形態のものが開発されている。
 従来のコード式ではなく、入所者に押しボタン式発信器を身につけてもらい、無線で緊急コールができるタイプのものである。自立度が高い方が利用されるケアハウスや有料老人ホームなどでの採用が多く、アンテナとなる受信機の設置場所により、部屋内のみの利用か施設内のどこでも発信可能の用途に分けられる。
 トイレ内異常
 トイレの使用状況を検知し、長時間使用を異常事態とみなして警報を発するトイレセンサシステムは、主に超音波方式と赤外線方式のものに大別される。
 超音波センサを便座の真上に設置することにより、トイレでの座位を検知し、トイレ使用とみなす。長時間使用を異常事態として知らせる仕組みとなっている。この方式だと、使用中及び警報動作に関する誤報は少ないが、トイレ内での倒れ込み検知には対応していないことに注意したい。
 赤外線センサは、検知エリア内における反射光量の変化を検知するタイプで、トイレ使用中から床への倒れ込みにおいても検出可能となる。ただ、設置場所や取付位置、それに使用方法など運用上の問題により誤報が発生する恐れがあることを考慮する必要がある。
 徘徊高齢者対応
 外部に出られた入居者を検知し、警報で知らせる徘徊検知システムで、ここでは主に2方式を挙げておく。
 外部バルコニーやテラスに赤外線センサを設置することで、徘徊高齢者に限らず、人及び小動物でも検知するタイプである。誤報の恐れがあることに注意したい。ただ、外部からの不法侵入も検知するので、防犯システムとしても役立つメリットがある。
 また、タグと呼ばれるものを高齢者に取り付け、徘徊される方のみ検知するタイプのものもある。タグの仕様にもいくつかあり、メンテナンスも含めた使用方法など運用上の問題点に注意する必要がある。
 おむつ交換     
 おむつの濡れを検知して知らせるおむつセンサシステムがあるが、ここで重要なのは、このシステムの意義を知ることである。即ち、おむつの濡れ検知は、その方の排尿パターンとして捉えられ、これによりトイレへの誘導を可能とし、おむつを取りはずせることも考えられる。また、迅速なおむつ交換も可能となり、高齢者の肌荒れなどを防ぐこともできる。
 在室在床確認     
 ケアハウスなどでは、入所者の在・不在を確認することが度々必要となり、戸に設置された電気錠の施錠状態による検出や、室内の動線部に設置された生活リズムセンサ(パッシブセンサ)による検出で在室確認をすることができる。
 入退室管理
 戸に設置された電気錠を、媒体を用いて施解錠するシステムで、中央にはリモートでの操作を可能にした操作盤やコンピュータが設置される。施設のセキュリティだけでなく、入所者の無断外出を防止する役割も果たす。
 主に、暗証番号数字キーを並べたキースイッチ方式が普及しているが、最近では非接触型カード方式も注目されている。
 トランスポンダを埋め込んだICカードをリーダにかざすだけで鍵管理が可能で、もちろん、電池寿命の心配もいらずカード発行も簡単にできる。また、場所による鍵管理など多様な設定も可能である。リーダの認識応答が改善され、またカード単価も下がってきたので、今後の需要が見込まれる。
 それに、共用エレベータや玄関の自動ドアにもこの制御を施すことにより、入居者の安全確保が可能で、かつ施設での幅広い運用方法を提供できるので、設計のPointとしてもらいたい。
 PHS連携
ナースコールやその他のセンサ警報を、構内PHSに着信させることで、施設内のどこにいても介護職員は情報をキャッチでき、迅速な対応を可能とする。設計においては、電話設備やインターホン設備との兼ね合いも確認することが大事である。
 また、PHSから発する電波がペースメーカー等に支障ないかどうかを施主に説明できるように、仕様のチェックをしておく必要がある。
 集約統合+ネットワーク対応
 「介護支援システム」は、それぞれ独立したシステムとしても充分機能するが、それらが全て集約・統合され、コンピュータ上で監視できるタイプのものが開発されている。
 施設内にイントラネットを構築し、監視端末はWebブラウザを起動させて行うWeb対応型介護支援システムが開発された。ナースコールやトイレセンサなどの制御系システムのネットワーク、WWW及びデータベースサーバーと監視端末であるクライアントからなるクライアント−サーバー型イントラネット、それにPHSを含むPBXを中心とした電話設備とが融合され、まさに最新ITが盛り込まれた仕様となっている。
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